発達障害グレーゾーンと愛する犬

発達障害のグレーゾーンと鬱病診断され、人生に悩み就職をやり直すことに

「好き」ってなんだ

 

好きであることとマニアであることが同列のように扱われている、そんな感覚を時々覚えます。

狭く深く好き、浅く広く好き、各々の「好き」が認められない苦しさを感じたことがある人、いらっしゃるんじゃないでしょうか?

 

私は少年漫画が好きです。でも、ワンピースは40巻くらいまで読んで、あまりハマらず、ゴールデンカムイは興味は持ちつつも、時間とお金が足りず読んでいません。スラムダンクは多分読んでもあまりストライクにはならないだろうな、と思って手を出していません。

私は少女漫画が好きです。でも、君に届け。とかアオハラは正直あまり共感できません。どっちかというと白泉社系が好きです。でも、赤髪の白雪姫にはそこまでハマりませんでした。

私は乙女ゲームが好きです。でもうたプリスタスカには興味が持てません。

私は明治維新の話が好きです。でも幕府の重要人やら維新の英雄を網羅しているわけではありません。

 

誰しもこのように、ハマるもの、ハマらないもの傾向があるはずです。

でも、下手に「好き」と言うと、オタク度チェックをしたがる輩が必ず現れ、「じゃあ、あの作品知ってる?」「あの曲知ってる?」という話になります。

「知らない」と正直に言えば、大抵「え、知らないんだ〜(ニワカじゃん)」という白けた目線を向けられることになってしまう。

 

例えば私が嵐を好きだとしましょう。

嵐っていいですよね。素敵な曲が多い。爽やかで胸に響くなあ。と思っていたとしましょう。

でも、嵐が好きというなら、コンサートだけで歌われる曲やら、個人曲やら、網羅してないといけませんか?

 

 

なんでこんな、今までにもいろんな人が既に言い尽くしてきた不満を口にしているか。

それは、やっぱり就活に関わるからです。

「趣味は?」「特技は?」「尊敬している人は?」「好きなものは?」

もちろん、企業はべつにその中身を見てるわけではないはずです。どちらかというと、その自分にとって大切なものについて、他人に説明できる力を見ているのだと分かっています。

でも、じゃあ私が「乙女ゲーム攻略サイトを見ずにベストな選択肢を選び、スチルを無駄なく回収できることが特技です」って言えますか?

言えませんよ。

あの難しさは、やったことがある人にしかわからない。マイナー故の苦しさ。

だから、「散歩することが好きです。」みたいな、どう見ても否定されなそうなことばかり答えることになる。

逆に「土方歳三を尊敬している」と言えますか。これもまた難しい。若い女性に人気がある人だから、当然「どこを尊敬しているの?」っていう話になる。「これと決めたことを貫くために、非情なまでに厳しくなれる。近藤を思い、彼を大成させるために、恐れられ憎まれる役を買っていたところが好きです。」って答えたい。

でもそんなことはできないのです。

第一の理由:面接官もオタクだった場合、ありきたりな答えだから。浅い人間だと思われる危険性。

第二の理由:単純に回答内容から「会社組織でやっていけなそう。周囲と軋轢を呼びそう」と認識される危険性。

 

はい、結果ね。

好きなもの関連は、本心で好きか嫌いかとか関係なく、「ほどほどに認知度があり、けれどありきたり過ぎず、悪印象を与える危険性がない」ものを言うしか無くなるわけですよ。

だから、最近尊敬している人物は美○明宏と答えるようにしています。

適度に意表を突き、しかし有名で、あの時代に「性」を超越して活動し、人生についての深い考察をたくさん発表している。人間としても過激性はそこまで高くない。(まあ、交友関係で多少過激な人はいますが)

もちろん美○明宏さんは素晴らしい人です。尊敬もできる人だから、嘘ではありません。でも、ネットで調べて、「あ、この人なら悪くなさそう」と判断して、私が意識的に尊敬する人物に設定したのです。

だから、面接で答えていても「ああ、本心じゃないなあ」という苦しさがずっとつきまとう。

 

もちろん、コミュ力がとても高い人は、もっと気楽に相手と盛り上がれるような話題を提示できるのでしょう。そこに一々苦労するからこそのグレーゾーンなのでしょう。

相手の反応がイマイチ予想できないから、無難そうな答えを選びたくなってしまう、この苦しい性よ…。

 

それでもね、プライベートと仕事はちゃんと分けられるんです。仕事で好きにならなきゃいけないものは、ちゃんと積極的に情熱を持って好きになれるし、個人で好きだとしても、社会的に受け入れにくそうなことは控えようという考えは持っているんです。

だから、好きとか嫌いとか、そういうプライベートなことをもう聞かないでほしい。

そもそも採用で企業側が一番意識してるのはコミュニケーション能力って結果がどうなんだ。営業職ならまあわかるけど、事務でパソコン打って、メールでやりとりしてっていう過程に、対面のコミュ力はそんなに必要ですか?むしろ求められるのはビジネスマナーでしょう…。

空気読む力は相手を不快にさせないレベルでは大切ですが、みんなといつも和気藹々と盛り上がるレベルまで必要とはどうしても思えない。でも、集団の中で仲良くできる力がないと、生きていけない会社が多い…。

無い物ねだりなのはわかっていても、やっぱり苦しいものは苦しいのです。

営業能力とかコミュニケーション能力を測りたいなら、面接前に事前に「○○」について調べておき、当日その素晴らしさをプレゼンしてください。とかいう風にお題を与えてほしい。

 

好きなものを正直に言えないのは苦しいことなのです。

そして、同じものを好いている集団の中で「どちらがより深い愛を持っているか」のマウントの取り合いもやめたいのです。

マイナーなものを好きだったとしても、自分がそれについて詳しくもないのに、偏見から「変わってる」と差別されたくないのです。

 

趣味や話が合いそうなら、仲良くなれそうな範囲で適度に付き合う。自分と好みが違っても、静かに距離を取り合って、互いに居心地良く過ごせるようにする。

そういうことを皆が意識的に気をつけないと、結局自分も社会もどんどん息苦しくなるだけなんじゃないかな、そんな風に思う今日この頃。